AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する

腹立たしさに思わずいつもその唇を噛んでしまう。


その唇には毒が塗られている。







フゥ、と浅く息を吐きながら顔を離す。
僅かに焦点の合わない表情の唇には微量ながら血が滲んでいる。
何となく気が向いたので、ソファに頭を押さえつけたまま それを舌で拭ってやる。
女は特に抵抗はしなかったが、憮然とした顔で呟く。



「・・・イタイ」
「痛覚が正常に機能してる証拠だな。健康で何よりじゃねぇか」
「全っ然反省の意思が見えないんですけど」



しれっと言い返してやれば、今度こそ覚醒した意識で女が睨み返してくる。



「蛭魔君には鬼のように牙が生えていることは知ってますけどね、まさか自分の身体を持て余しているとは思えませんが?」
「姉崎サンもそんなに素晴しい頭脳を持っているなら、いい加減原因に気付いても良いものだと思いますけどねぇ」
「頭にくる言い方ね!」
「いい加減頭にきてんのはこっちだ、糞女」



ずい、と女の前にコーヒーカップを差し出す。
俺の分なので、中身はブラックだ。
動きだけで、「飲め」という意思が伝わったようで、怪訝そうにしながらも女は身を起こしてそれを口にする。
一口含んだ途端に苦々しい顔になり、眉根を寄せながらそれを嚥下した。



「・・・苦い」
「テメェがしてんのはそういうことなんだよ」
「・・・すみません、全然意味が解らないので不肖 姉崎めにご説明願えますか」



先程眉根を寄せたのとは違う意味で、眉間に皺を寄せながら女が視線を投げてくる。
言葉を多く重ねるのも野暮ったいので、俺は手短にテーブルの上の皿を引き寄せた。
皿の上には僅かに齧った後のあるシュークリームが乗っている。
女は俺の一連の動作を、手品か何かを待つかのようにじっと追っていた。
種も仕掛けも、何も起こらない皿を見て、それでも女は何かに気付いたかのように顔を上げた。



「あ」
「解ったか」
「・・・すごーく理不尽な理由なら一つ挙がったわ」
「ひどく正当な理由だから、その考えは間違いなんじゃねぇの?」
「今ので確信したわよ、この人非人!」



女は怒りもあらわに睨みつけてくる。
煩いことになりそうだったので、そうなる前にその口を塞いだ。

その歯列をなぞる途端に、常は舌が痺れたようになる。
比喩的な表現ではなく、事実 毒にやられたようにビリビリと不快な感覚が広がるのだ。
女の唇からは 絶えず毒の様に、シュークリームやら何やらによる甘い空気が流れていた。
それに耐え切れずに、苛立ちまぎれに いつもその唇を噛んでしまう。

先程コーヒーを含んだばかりの口内は、さすが毒も無く、珍しく犬歯も鳴りを潜めて大人しく唇は離れた。



「・・・キスして噛まれなかったのって初めてかもしれない・・・」


女も似たようなことを考えていたらしく、意識を揺らしつつゆっくりと零した。



「甘ったるい口してなきゃ丸く収まんだよ」
「キスする前には歯を磨けっていうの?」
「そんな色気もへったくれもねー奴にその気になるわけねーだろ」
「じゃあ何、あたしに甘いもの食べるなっていうの?」
「いよいよ姉崎サンは学習なさったようなので、今後の働きに期待してますよ」
「・・・もうっ」


この悪魔、 とは口にしないまでもその眼の力で知れた。

女はブラックのカップに指先だけ浸して、その指で俺の唇をなぞり、上から自分の唇を重ねる。
そして そのまま俺の唇を噛んだ。
柔いそれは僅かの痛みをもたらすが、血を滲ませる程ではなかった。
すぐに唇を離した女は、それでも先程の俺を真似る様に唇の端を舌で舐める。



「・・・キスの度に血塗れになるんじゃ敵わないわ」

憮然としながら女は言う。



「だけどキスしないでなんて言えない」



悔しそうな顔で女は告げる。



そして、今度は皿の上のシュークリームに手を伸ばした。
齧ってある穴に指を突っ込んで、中のクリームを掬う。それをそのまま女は自分の唇に乗せた。

俺は身動ぎもせずに、一連の動作をただ見詰めていた。

特に何を告げるでもなく、そのまま唇を重ねる。
一瞬の間に、不快な感覚が身体中に広がって、やはり苛立ちをぶつけるようにその唇に噛み付いてしまう。
腕の中の女が少し身体を揺らした。


けれど今度は無理に身体を引き離すことはしなかった。





女にとって、この行為と糖の塊の様なシュークリームとを比べる秤など持ち合わせていない。
解りきっていたことだったので、今までこの話題を言い出すことはしなかった。

女の唇はいつでも毒が塗ってあるかの様に甘い。

だからいつまでも繰り返す。
いつまでも俺は女の唇を噛み締める。



深めた唇が、甘さを通り越して いよいよ苦味を帯びてきたように感じ出す。
それこそ毒の性質のようだ。

それでも唇を噛みながら、憎憎しさを込めるように両の腕で女を抱き潰す。




いい加減腹立たしいのは、
毒があると知りながら、それでも劇薬に身を沈めてしまう愚かさであると、


女は生涯 気付くことはないだろう。











***
ど こ の バカップルでしょうか。わたしはこんなひとたちしりませんよ。
武さんからの1000HITリクで「シュークリームをたべるヒル魔」でした。
食 べ て な い 。
その上なんだかプレイちっく(死)だし、自由過ぎますか・・・?(汗)
えー、こんなんで良ければどうか受け取ってやってください・・・。
1000HITありがとうございました!

(2005/11/04)