「きゃー!」
先ほどまで大人しくテーブルで作業していた女が突然、けたたましく叫んだ。
うるせぇ と だまれ を一度に言おうとして、
残念なことに俺の舌は2枚もないのでどちらも言うことはかなわなかった。
こんなしがない人間の身体で、普段鬼よ悪魔よと罵られるのは理不尽なもんだ。
女への不満から、世の中への不満に意識が平行した頃、
女は動揺を隠しきれない様子でぎこちなく後ろのソファに寝そべった俺を振り返った。
「ど、どうしよう・・・蛭魔君・・・」
「知るか。なんだよ」
エスパーでもねぇのに目を見ててめぇの考えなんか読めるもんか。
「愛・・・」
「あい?」
「愛してる の愛・・・」
「愛がなんだよまだるっこしい。さっさと結論までいけ」
「蛭魔君のパソコン使ってたら、愛って言葉が変換出来た・・・!」
悟りを開いた僧侶のように、女は開眼して言った。
そして、殺意を込めた俺の視線を通り越して俺の眼球だけを見つめて続ける。
「あたしは、ただ『間』って入れようと思ってたのに『愛だ』って一発変換したの!」
「・・・だからどうした」
「まさか!まさか蛭魔君のパソコンが愛だなんて言葉を、それも序盤に出してくるなんて!」
「・・・クルナンテ?」
「故障かもしれないよ!」
女は真顔でそう言ってのけて、あまつさえ「ウィルス感染かも」などと連想ゲームを始めだしたので、
とりあえず。
明日提出するとかいう委員会用のファイルを
フロッピーごと抹消した。
*****
蛭魔さんの真実の愛について書こうかと思ったんですけど、
脳内の蛭魔さんが銃を向けてくるのでやめにしました。
まもりちゃんは天然じゃないんです。
あれです。「思い込みって酷ぇなー(うろ覚え)」です。
彼女にとって蛭魔さんがそうだからそうとしか結びつかないんですね。
(2005/02/16)