「恋とか愛とかいう悩みの無いキスをして」
ブン殴ってやろうか この糞女。
夢見たこと抜かしてんじゃねぇよ。
この狭い島国で、なんでどこぞの大陸の風習を真似なきゃならねぇ。
そもそも挨拶なんか交わすような暢気な性格はあいにく持ち合わせちゃいない。
さっきまで、人気の無くなった部室の中で二人、
一触即発の危うさで対峙していたのだけれど、女の戯けた台詞に 気が削がれた。
壁に追い詰めた細身を、両脇に添えた腕を外してやることで逃してやる。
すると女は、俺の体が離れていくのに比例して床へと座り込んでいった。
かすかな嗚咽が聞こえてくる。
興醒めもいいところで、もうとっとと帰ってしまおうと
床に落とした鞄を拾って出口へ向かった。
足取りは迷わない。
扉を開いたときに、女は言った。
「蛭魔君に恋をしたら、あたしきっとアメフト部にいられない」
何をふざけたことを と思った。
足取りは迷わない。
身を翻して女の元へ行き、その髪を掴んで上を向かせた。
対応の仕方が分からない という顔には目もくれず、勢いのまま口付けた。
多少暴れたが、歯牙にもかけずに押さえつけた。
愛でも恋でも勝手に悩めばいいと 思った。
***
ワイルドで御無体な蛭魔さま。
馴れ初めの馴れ初め、みたいな。
いつもの二人のような関係になるには、これからまもりちゃんがいろいろ吹っ切らなきゃいけない。
(2005/02/18)