ちょっと待ってくれ と3回唸った。
ちょっと待ってくれ ちょっと待ってくれ ちょっと待ってくれ
しかし3回唸ってから時間も誰も待ってくれないということに気がついて、とりあえず落ち着こうと思った。
そうだ、落ち着こう。
そうだ、京都行こう。
・・・もはやそれが余裕なのか、動転しきっているのか、判別出来ない。
それくらい慌てていた。
突然ですが、トキメキの嵐がやってきました。
なんてことない昼下がり、仕事もなかったので事務所のソファで昼寝をしていると すぅ、 と目が覚めた。
ジャンプは被さっていなかったので、ぱっかりと天井が目に入る。
あんまり自然に目が覚めたから、夢か現か、自分が何をしているのか、瞬時にはわからない。
状況を認識しようと気配を探ると、すぐ近くから人が動く様子があった。
ちら と瞳だけそちらに向ければ、眼鏡の従業員が帳簿をつけていた。
しんぱちだ
眼鏡の従業員はせっせと仕事をしていて、俺の視線には気づかない。
さらさらと帳簿に字を書いている。
やけに あかが おおいな。
と 思ったら、新八も「赤ばっか」と呟いた。
呟いた後、溜め息を吐いた。
はあ、 と溜め息を吐いた。
それだけ。
それだけ だけど、 トキメキました。
ぶわっと風が吹いて
がばっと身体が浮いて
ぐしゃっと胸が潰されて
どかっと頭を蹴られた感じ。
(あれ、トキメキってこんな暴力的なもんだっけ?)
あんまり一気にいろいろくるもんだから、咄嗟にちょっとまってくれ、と唸った。
願いも空しく、時間は止まっちゃくれなかった。
だが、あたふた慌ててる間に ひとまずトキメキの嵐は去った。
なんだあれ なんだったんだ なんだあれ。
あんなん知らん。なんだあれは。
困るぜ 困っちゃうよ、困っちゃうんだってば。
俺はあんなの欲しくない。
あんな乱暴者、神楽と定春だけで十分だ。(どっちかだけでも十分だ)
俺はあんなの欲しくない。
あんなの持ってたって、どうすりゃいいんだ。
帳簿付けが終わったみたいで、新八はまた溜め息を吐きながら帳面を閉じた。
その溜め息に 再び俺の頭ん中で乱暴者が暴れ回った。なんかピンクのゴミを撒き散らしていった。
頭がガンガンする。死ぬかもしんない。
乱暴者の嵐、 このまま俺を殺すのか。
え?今日俺命日?死因は何よ?
トキメキの過労死か?なんか格好良いな、いいかもしんない。
俺にしちゃあ上等な死に方だ。
と、思ったが新八が「今日の夕飯はもやし炒めだなぁ」と言ったのが聞こえたのでやっぱ死ぬのはやめておく。
もやし炒めとは読んでそのまま、もやしだけを炒めた料理だ。
最初見たときはその地味な豪快さにたまげたもんだが、なんでか新八がつくると美味い。地味に。
だからもう少し生きることにした。
乱暴者の嵐、 このまま俺を殺すのか。
だけど俺は攘夷の地獄も生き延びて、のらりくらりとここまできたんだ。
そう簡単に死ぬもんか。
立ち塞がられると、抗いたくなっちまうのが 俺の性だ。
花も嵐も乗り越えて、アイツに辿り着いてみせようか。
腹上死がしたいなァ、なんて ふざけたことを考えたこともある。
だが今は、
恋に殉じて乱暴者に殺されるのも良いかもな なんて思ったりもした。
***
銀さん自覚編。
銀さんはなんかコテンパンにやられてるのが可愛いですね。
すっごいダメっぽいんだけど、やる時ゃやるから格好良いのです。漢なのです。
(2005/07/10)