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新八が「掃除手伝って下さい」と言ったので、軽く「いいよ」と答えた。

そしたらあの野郎、「個人作業です」とかつってトイレ掃除と風呂掃除押し付けてきやがった。
思ったより多く受け持ったな、と思ったが 一通り掃除を終えて、布団を干してる新八のところへ報告しに行ったら、
風呂桶を見て「湯垢が残ってるんで綺麗に落としてください」と言われ、
便器を見て「縁の裏もきちんと磨いてください。あと床も拭いてくださいよ」と言われた。
重労働過ぎねぇ?と不満を感じたが、 まァまァ 新八は事務所と和室やってんだし 面積的には少ねぇよな と思い直し、
力の限り風呂桶を磨き、便器の裏を磨き、床を磨いた。磨きまくった。
軽く肩が凝るくらい働いて、やれやれ疲れた、と思いながら事務所に戻ったら新八が掃除機を仕舞っていた。


え?掃除機 掛けてただけ?


むっちゃ不公平じゃねぇ?と思いながら唖然とその姿を見ていたら、振り向いた新八が俺に気付いた。
「あ、銀さん。おわったんですか」と聞かれたので、内心の疑問を堪えつつ「おー」と答えた。
それくらいの分別は持ってるんですよ。大人ですので。
大人だから我慢しようかと思ったんだけれども、再度点検を終えて「ん、綺麗になってる」と偉そうに言った新八の顔が可愛かったので。


かわいかった の で。




「何か褒美くれ」



と 口から出てしまった。


「褒美?」
「掃除の」
「・・・そうですねぇ」


「頑張ってたしねぇ」と言いながら新八は顎をなぞって考える振りを見せた。
その言い方もちょっと偉そうで、お前は俺の保母さんか小学校の先生か と少し思った。

褒美っつーか、その可愛い顔が欲しかった。
偉そうに うん、 と一つ頷いた頭が、腕組みした姿が、ちょっと上がった口元が、愛しかった。
何だか無性に全部が愛しく、手に入れたいな、と思った。

くれるなんて思っちゃいないけれど、言ってしまったもんはしょうがない。
目の前の子供が、そこまで気付く筈も無い。
笑ってごまかして菓子でも貰おう。


その前段階として、薄ら笑いを浮かべようとした時、新八が言った。




「嘘と本当、どっちが欲しいですか?」





「は?」
「だから、ご褒美に」
「嘘か、本当?」
「僕のね。特別に銀さんに教えてあげましょう。・・・言いふらしても良いですよ」



どんなナルシストだ、と思うような選択だったが、俺にとっちゃ新八の頭部と同じくらい欲しいものなので、十分褒美の価値があった。
迷わず、「本当」と答える。
新八の本当が知りたかったし、嘘は欲しくなかったから。

聞かなきゃ良かった。



「本当のことですが、最近、好きな人が出来ました」



軽くへこんだ。いや、結構沈んだ。深いな、こりゃ。



「・・・まじで?」
「本当のことですから」
「どんな奴?俺知ってんの」
「知ってますよ。なかなか可愛い人ですよ。一緒にいて面白い」
「まじで」
「本当のことですから」



がっくり項垂れた。実際床に手をついてしまった。

言いふらしても良いって こういうことか。
畜生 このナルシスト野郎の能天気野郎め。
お前は今 春の野原のど真ん中で菜の花摘んでるかもしんねぇけどな、こちとら氷河期にワープ体験よ。
解るか この苦しみが。
トップシークレットの褒美だろうが、こうなりゃもう拷問のレベルだ。

お前、こないだの俺の婿入り騒動の時に「女には気をつけよう」って言ってたじゃねぇか。
舌の根も乾かないうちに、もう女の餌食か。喰われるのか。



なんかもう本格的にがっくりきていて、起き上がることも出来なかった。
このまま一生、便所の前の床と手を取り合って生きるのと、新八に「女は喰っても喰われるな」と助言するのと、どっちが容易いだろう。
問題提起は出来ても、思考する力が無いので くだらない考えは悶々と頭に広がるだけだった。

そんな俺を見て、新八が小さく笑った。なにを このくそ。



「銀さん」
「・・・なんじゃい」
「トイレもお風呂場も本当に綺麗にしてもらったんで、オマケに、僕の嘘も教えてあげましょうか」
「もー すきにして」



嘘なんぞどうすりゃええっちゅうねん、アホか。メガネ。好きにしろ。勝手にしてちょうだい。 バカヤロー





「僕 最近、銀さんのことが世界で一番嫌いになりました」
ふーんあっそ、嫌われたもんだね 俺も。

「嘘なので反対の意味ですからね」
へいへい、世界で一番嫌われてないわけね。
世界で一番 嫌われて ない

































「・・・エッ「銀さんて」


俺が驚いて顔を上げるのと、しゃがみこんだ新八がにっこりと笑って話しかけるのとは、ほぼ同時だった。

新八は、笑って言った。







「銀さんて、見てて飽きなくて、面白いですよね」
「し、ん」
「なんかたまに健気だなぁ とすら思いますよ」








それが どういう意味なのか聞けなくて、その場で悶々とした俺を見て
「面白い顔」と新八がまた笑った。















***
告白。新八から編。
新八はなんかもう既に銀さんの気持ちを知ってる状態。
銀さんがわかりやすいんじゃなくて(それもあるけど)、なんとなく、空気で。
原作でも結構 凛々しいとこあるから、これくらい男前に告白するのもありかと・・・。

やや偽者っぽいけど・・・。

(2005/08/04)