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甘ったれた人間になりたくて、





甘いもんでも食っていれば はらわたの中からじわじわと、砂糖に固められていくんじゃないかと思った。
血塗れになった手が、薄っすらと朱に染まってもう色が抜けないように思うみたいに、
砂糖漬けになった身体なら、甘ったれた人間になれるような気がした。

砂糖漬けみたいになった身体なら、甘ったれたことを夢見ても構わないんじゃないかと思った。



そう 隣に座る新八に言ったら、
「病気になるまで甘いもん食わなきゃ甘ったれになれないなんて、難儀な人ですね」
と笑った。

笑った後でちょっと真面目な顔をして、俺の手を握った。


「そうか 僕はアンタが死ぬ間際になんなきゃ甘やかしてやれないのか」
「今甘やかしてくれて構わないけどね」
「甘やかすってね、甘やかしてもらう方も望んでなきゃ駄目なんですよ」
「えー、銀さんめっちゃ新八君に甘やかしてもらいたいんですけど?」



ちょっとやらしい目で笑って、新八を覗くと、新八も付き合うみたいに笑った。
付き合いの微笑みはすぐに解けた。
解けた後には寂しげな顔が残る。

新八が、握っていた手を、更に強く握った。



「アンタのこと、一も二もなく甘やかしてやりたいですよ」
目を伏せながら新八は言う。

「パフェもチョコレートも もうたくさんだ って嫌がるほど、甘やかして甘ったれさせて、」
「してちょうだいよ」
「出来ません」


ふふっ と新八が笑う。新八の、独特の笑い方だ。
どっちかっつーと、女のお妙の方がこういう技を身に着けていた方が良いのでは、と思うのだが、人生とは上手くいかないものである。
俺が欲しいと思っているものを持っている奴が、俺の手にたまたま掴んでいたものを欲しがっていたりする。
そしてそれを気軽に交換出来るほど、容易くは 無い。

容易くは無い。



「・・・甘やかしてちょうだいよ」
今度は真面目な顔で言った。ふざけたり、やらしさなんて微塵も込めなかった。

伏せていた目を上げて、新八がじっと俺を見る。
するとまた ふふ と笑って、握っていた手を自分の膝の上に持っていって、もう片方の手で軽く撫でるように叩いた。





「やっぱり銀さんって甘ったれですね」
「・・・だろ?」
「うん。アンタ、甘いもんなんて食べなくったって十分甘ったれですよ」




「だから糖分は週一で構いませんね」と言いながら、新八はまた笑った。
俺はちょっとがっかりしながら、「・・・そうね、あはは・・・」と返した。

新八はまだ俺の手を撫でている。
それはゆっくりとした動きで、お互いの熱を分け合って暖かくなった掌がより一層心地好く感じる。
だから、新八が離すまでは、そのままでいることにした。






死ぬ間際じゃなくたって、甘ったれたことを言ってるじゃないか。俺はこんなにも甘ったれじゃねぇか。

こんな甘ったれた人間なら、甘っちょろい夢をみてもいいじゃねぇか。
頭の奥にある 醒めた、冷たい考えなんか無視をして、夢みたいなことばっかり考えたっていいじゃないか。



この手を握り返しても、いいじゃないか。







そう思いながら、未だ、怖くて、
指先一つ、動かすことが出来ずに、



ただ 新八を見つめていた。



















***
銀さんは馬鹿ったれではありますが、甘ったれではないと思います。
人によっかかって生きていくなんて、出来ない人かと。人に迷惑は掛けるけどね。
わがままを言うことと、滅茶苦茶を言うことと、甘えることを履き違えてるのがうちの銀さんです。
そして新八はそんな銀さんを感じているから、銀さんの負担にならない程度に、自分から甘やかそうとしています。
妄想し過ぎ?

(2005/08/14)