唇が触れ合う瞬間は、何のことだかわからない。
彼は存外に柔らかい唇をしているから。
しばらくして、じんわりと温もりが伝わってきてから、「ああ、もう触れ合っていたのか」と気付く。
そんなことを、以前彼に告げたら、不満そうな顔をしていた。
「銀さんが、いっぱいいっぱいになってるときに、お前って奴は冷静に判断を下してる余裕があるのか」
「余裕っていうか、だからいつ口がくっ付いてんのか、最初わかんないですよ」
「うるさいうるさい。聞きたくない!」
嫌嫌と可愛らしく首を振り回す三十路近い男に、呆れつつも胸が熱くなってしまう。
僕は多分もうどっか戻れないところまで行っちゃたんだろう。
「元はといえば、銀さんが顔に似合わず、可愛らしいキスなんかするからでしょ」
「わー、なんだこいつ、この開き直り方」
「うだうだ銀さんが煩いから、元を辿ってあげてるんでしょーが。ありがたく思ってくださいよ」
「こんな押し付けがましい親切初めてよ」
「人間何事も経験ですよ」
おかしいなぁ、いつからこんな話になってしまったんだろう。
隣の男はついに膝を抱え込んでしまった。うざい。しょうもない。
僕はただ、
僕はただ、彼の唇の温かさを伝えようと思っただけなのに。
彼にとっては、口付けに、僕がよそ事を考えていることの方が気に掛かってしまうものなのか。
人というのは、いろいろな捉え方をするものなのだなぁ。
そうだなぁ。捉え方一つで、死んだ魚の目が、至高の武士の目に見えてしまうことがあるんだから、人間とは様々だなぁ。
様々な人間がいるから、こんなしょうもない大人に恋する奴だって出てくるんだろう。
自分がそうなるつもりは、さらさらなかったんだけれども。
ふと、隣の男に目を向けると、未だにいじけている。しつこい。
埒もないと思いつつ、その頬に顔を寄せれば、一瞬彼は意味不明な顔をした。
ほらぁ、瞬間はわかんないもんでしょーが。
僕は物言いたげに笑った。
***
どこまでも大人な新ちゃん。
こんな16歳いるのかしらん。
でも、金魂の新八のこともあるけど、割と新ちゃんは人付き合いとか上手い気がする。
仕事は出来ないけど、思いやりに溢れている子なんです(夢)。
(2005/12/23)