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放課後の教室に、私は一人立ち竦む。
初恋不実
校庭からは部活動をしている号令が遠く聞こえる。私の席は窓際で、学級日誌や委員会誌を書いたりするときは、息抜きがてらによくその風景を眺めていたりもした。けれど今日は日直の仕事も委員会の仕事も無かったし、そもそも私は窓なんて見ていなかった。
2月の教室は薄寒く、室内が丸々一つ、大きな氷の塊になってしまったかのように感じる。指先一つ動かすことが出来ない。5時を回った今、外はもう日もほとんど落ちてほの暗い。家に帰ろう、――帰らなきゃ と思うのに、足が一歩も動かなかった。
数分前、この教室にはもう一人の人間がいた。クラスメイトではない。一つ上の学年の先輩だ。彼はわざわざ階下の教室までやってきて、先程あたしに言いたいことだけを言って去って行った。
結論だけで言えば、あたしは失恋をしたことになるんだろうか。
告げられた台詞は、別離を意味するものであったし、あたしはその言葉に確実に傷付いた。けれどあたしは、彼に恋慕なんか抱いていなかった。これっぽっち、ただの一瞬も。
そもそもあたしは生まれてこの方、誰とも付き合ったことなんてない。誰かに恋をしたことすら、無い。それなのに、恋愛の初歩の段階を色々すっ飛ばして、いきなり別れと傷心を経験しているっていうのは、一体どういうことなんだろう。
更にいただけないのは、今日の日付が奇しくも2月14日であるということだ。しかも腕の中にはチョコレートなんて抱えてしまっている。世間的に見て、今日のあたしは『バレンタイン・デーに憧れの先輩に振られた女の子』と分類されてしまうのではなかろうか。
なんだかいろんなことに呆然としてしまって、やっぱりあたしは、教室の真ん中でただ立ち尽くしているしか出来ない。
こんなとこで、こんなものを持って突っ立っているところを誰かに見られでもしたら、絵的にも日付的にも、あたしの身に何が起こったかなんて、一目瞭然だろうに。――それが誤解であろうと無かろうと。
そんなあれこれを考えているところに、ガラリという音が響いた。教室の後ろの引き戸が開いた音だった。
それまで気味が悪いくらい静かだった空間に、それは異質な程の主張をしてきて、思わず瞬間に視線を走らせた。
大きく開け放たれたドアから姿を現したのは、薄暗がりにも眩しい髪色をした、このクラス、いやこの学校切っての超問題児であった。校長さえも震え上がらせるクラスメイトはふてぶてしい歩みでゆっくりと教室に入ってくると、ちらり、とこちらに視線を投げて寄越した。その眼は、全てを知っている、と言っていた。
私は、最初からそんな気がしていたので、別段驚いたり、羞恥を感じることは無かった。
ただ、以前もこんなことがあったなぁ、とぼんやりと思い出していた。
あれはまだ卸したての制服も新しい、初夏の日のことだった。
***
ヒルまも長編ついにスタート。。
蛭魔さんとまもりちゃんは同じクラスだったんですね!(お前が決めたんだろ)
・・・原作で出てこないことを祈ります。。・・・・・・もう表記あったっけ?
えー、のっけから何ですが、元より完結までかなりの時間を要すると思うので、気長〜に付き合ってやってください。。かしこ。
(2005/10/25)
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